止まらない時間の渦の中で
足を踏ん張って生きてきた。
今・・・そう、今は
側にいて欲しいということ。
窓でカーテンがはためくたびにパラパラと読みかけの本が旅をはじめる。
ソファーから見えるのは透き通って突き抜けるような空と
無様に垂れ下がる幾重かの電線。
テレビから聞こえてきているのは、いつも平和なアナウンサーの声。
「万屋銀ちゃん」は全てを失って、一から作り上げた
銀時の城だ。
客以外足を踏み入れることを許さず
仲間と呼べるものを拒みながら一人過ごしてきていた。
「なーんで、こんなになってんのかねぇ・・・」
つぶやいて、家の中を見回す。
押入れからはみ出しているのは神楽の布団と定春のえさいれ。
少し前まで汚かった部屋は、毎日のように新八の手によって清潔を保っている。
冷蔵庫の中からは糖が少なくなり、今は野菜があふれている。
今まで取りこぼしてきたものは大きくて
再び銀時の手の中に戻ってきたことはなかった。
血が、戦が、生きていく糧であり、
仲間はその糧に喰われていったのだった。
所詮人間ハ別レテイクンダロ?
「銀ちゃん?」
「おぅ、、かえってたんか。」
気がつけば目の前にが袋を抱えて立っている。
「遠い目してたよ、どこ行ってたの?」
「遠すぎて・・・もう、いけない場所だ。」
銀髪を風になびかせて銀時は今を想う。
二度と「仲間」を作らないと決めた日から幾つの年を経たのだろう。
気がついたらまた"人"の中に自分を求めていた自分。
「銀ちゃんはそこに行きたいの?」
踏み込み始めた闇の中で聞こえてきたの声に顔をあげる。
まっすぐに銀時を見つめる瞳、
オ前ノ中ニモアルンダ。
鍵をかけた思い出の中ではなく、今、俺は此処にいる。
全てを捨てた頃は、思い出の中に自分を求めて走っていた。
今、俺の存在するこの場所をなんと呼ぶのだろう。
新八がいる。
神楽がいる。
定春がいる。
・・・がいる。
あの頃とは違うものの中に
やっと、俺は俺の意味を見出せている。
銀時はの肩に頬をのせた。
「・・・此処からどこにも行くなよ。」
「いかないよ。私の場所は此処だもん。」
そういって銀時の頭を撫でるの肩に一滴の想いが零れ落ちた。
カーテンのはためきが止んで本の一人旅が終幕を迎えた。
止まらない時間の渦にのって生きている。
反発と逆走をしてはいろいろなものをこぼしていった。
渦に乗るのを怯えていたのに、乗ってしまえば気楽で
思ったより穏やかで、心地よかったんだ。
そして、大切なもの見つけられた。
気恥ずかしくて言えない。
でも、俺の場所は此処だけ。
お前たちの中に存在してる。
だからずっと・・・。
END
1/27 瀬尾 亜梨子