貞治の考えていることなんか私には分からない。
むしろ・・・分かりたくない。
特製スパイス
「なあ、今日は俺が夕飯作ろうか?」
「却下。」
ソファーに座って雑誌を読んでいた私の後ろから貞治が声をかけてきた。
貞治と私はお隣さんどうし。
親同士が仲がよく、いまだに家族ぐるみで交流があり、
お互いの家に、まるで我が家のように出入りをしている。
特に貞治は気がつくとその辺をふらふらしていたりする。
昔はびっくりしていたが今ではもう、日常の光景だ。
そして、最近は貞治はやたらとうちの台所を使いたがる。
特製ジュースの試作やら、体にいいごはんの試作と言ってうちに作りにきた。
はじめのうちは「どんなもんかな」と思い食べてみたりしたが、
今では、二度と貞治の手にかかったものは口にするものかと誓っているのだ。
「遠慮しなくていいんだぞ?・・・。
今日はおばさんが仕事でいなくて腹減ってるんだろう?」
「・・・何で私に食べさせようとするの?」
「感想を聞こうかと。」
私は実験台ですか?
そっと貞治が手に持ってるスーパーの袋の中身をのぞいてみる。
「・・・。」
にがそうな色をした野菜や、甘そうな蜂蜜がわんさか入っている。
「今日のはうまいぞ。」
その根拠はどこにあるのですか?
「じゃあ、台所借りるぞ。」
そう言ったと思うと貞治は有無を言わせず、台所へと入っていった。
どかっ
めきょきょ
めこめこめ〜
・・・。
・・・絶対食べるもんか。
「・・・っん。」
貞治が台所に入ってから数時間が経過している。
私は居間のソファーで眠ってしまっていたらしい。
「起きたか?」
「うん・・・。」
カレーらしきいいにおいが鼻をくすぐる。
おなかが随分へっている。
「さあ、もう出来ているぞ。食え。」
「ヴ・・・(眼鏡光ってるよ・・・)
いやっ・・・そのお腹!そう、お腹全然すいてないから遠慮しとくよっ」
神とは残酷だ。
ナイスタイミングで私のお腹はいい音を出した。
「・・・・・はいい腹時計を持っているな。」
「うるさいっ!!
ちょっ!メモしないでよ!!」
「さあ、食え。」
貞治は逆光のまま、カレーのようなものを自分のスプーンですくい
ぐぐっと私へ差し出してきた。
拒んではみたものの、すきっ腹のためかあっさりと負け、
貞治の差し出したスプーンを受け入れてしまったのだった。
「・・・・。」
「どうだ?」
「・・・・・・・・おいしい。」
「だろう?
今日は特別なスパイスを使ってみたから自信があるんだ。」
そう言いながら私の口をつけたスプーンをそのまま使い
貞治もカレーのようなものを食べ始めた。
「・・・特別なものって?」
貞治は私を見てにっこりと笑った。
「愛。」
「・・・・は?」
「最上級のものだ。
混ぜてみたんだが、どうだ?」
どう反応していいか分からない。
分からないけれど―――。
「今まで食べてきたカレーの中で一番おいしい。」
そう、と貞治のつぶやく声が聞こえたかと思うと私は何も見えなくなった。
貞治の眼鏡と体温を感じるだけ。
「値段のつけようのないスパイスだぞ。」
唇を離して
そうつぶやいた貞治は
また、世界に一つだけのスパイスを私にくれた。
甘くて辛い
貞治のキス。
昔書いた貞治君の夢をのせてみました。
とてもキモイです。
ごめんなさい
2005 7/21 瀬尾 亜梨子