「ゲームセットウォンバイ青学手塚6−4!!」

勝った。私・・・伝えなくちゃ。

Shade




!!どこ行くんだ!?」
「ちょっと電話してくる!!」
桃に引き止められたが私は気にせず走った。

ここまで来れば大丈夫かな・・・。

人気の無いところまで来ると携帯からあるメモリを探し通話ボタンを押した。
呼び出し音だけが響く・・・。早く声が聞きたい。でも、出られないかもしれない・・・。

『もしもし・・・?』
電話の向こうから大好きな声が聞こえた。
「春・・・。」
か、終わったのか?青学の試合。』
向こうから聞こえる声はいつもと同じだったけどどこか寂しそうな気がした。
「うん・・・終わったよ。勝ったよ。」
『だよな。には優勝目指してほしいしな!!』
「私が試合に出てるわけじゃないけどね。」
軽く笑うと向こうからも笑い声が聞こえてきた。
『でも、お前は青学のマネージャーだろ。同じだ。』
私は青学のマネで春は六角の選手で・・・ホントはついて行きたかった。
でもきっと、春はダメって言うから我慢した。
「おじいは大丈夫?」
『あぁ、別状は無いそうだ。今は寝てるよ。』
「そっか。良かった、心配したんだよ。」
『悪かったな・・・』
そう言った春の声はどこか落ちていた。
「春・・・」
『どうした?』
「自分を責めないでね。」
春は沈黙してしばらく何も言わなかった。
春は優しいからきっと自分を責める。おじいのこと試合に負けた事。
何で自分には力が無いんだろうって。全然そんなこと無いのに。
「春のせいじゃないよ。皆悪くないよ。」
みんな、みんな優しいから、きっとそれぞれ自分を責めちゃうんじゃないかなって思った。
『なぁ、・・・』
しばらくの沈黙の後、春は静かになトーンで語り掛けた。
『俺達・・・負けちまったんだな。』
その言葉に時が止まったような感覚になった。
周りの蝉の声、飛行機の音、風の木々を揺らす音だけが響いた。

負け・・・春の、皆の夏が終わった。重々しく言った言葉はきっと今まで言えなかったのだろう。言ってしまったら、認めなくちゃいけないようだったんだろうな・・・。

「・・・うん。」
そっと、目を閉じて、私には肯定の言葉しか出なかった。
『だよな。さっきから剣太郎やダビデやいっちゃんが泣いてんだ・・・。』
「春は泣かないの?」
『馬鹿、俺が泣けるかよ。泣いてる奴を何とかすんのが先だろ。』
兄貴タイプだから泣けないって?気丈に振舞ってんのバレバレだよ?
どっちが馬鹿なんだか・・・。
「春、来年は私を全国まで連れてって、一緒に優勝のお祝いしようね。」
まだ暑い夏の青空を見上げ、私は静かに告げた。
『は!?何言ってんだ、お前来年はまだ中3だろ!?』
「ちょっと、まだ続きあるんだけど、青学のマネとしては来年も全国制覇狙うけど、 一個人としては春の恋人なので春に全国につれていってもらって春の優勝を見届けて一緒に祝いたいわけですよ。」
また、電話の向こうが静かになった。
「ちょ・・・春!?」
『え・・・あぁ・・・なんか、驚いた。』
その後軽く笑われた。でも、きっと心の奥底ではすんごく落ち込んでる。
剣太郎くんやダビデくんや樹さん達みたいに泣けるわけじゃないから。
きっと心に溜めこんじゃってるから。
「よし、これから、泣けない春クンのために慰めに行ってあげる。」
元気良く言うと向こうから素っ頓狂な声が聞こえた。
『ちょ・・・お前、二回戦は?』
「先輩に了承済みです!!いろって言われてもこればかっりは春の言うことは聞けません!!」
『おい・・・!』
一方的に電話を切ると思いきり夏の街に駆け出す。

強くて優しい君の木陰になるために。



終わり

後書き
Genius272が終わってから書きました。
勝ったけどおじいはどうよ!?みたいな。
おじいが心配です。来週にはわかると良いけど・・・・。
頑張りすぎる人には拠り所が必要。拠り所をあえて木陰としてみました。