小学校の頃からずっと見ていたあの人、優しくて、逞しくて、正義感の強い―

Promise



私は、あの日と同じようにテニスコートを眺めていた。夏の終わりの日。太陽は輝き、風は熱風。
「やってるなぁ、私の後輩達。」
日差しを手で遮りニッと笑った。
何人かが気付きこちらを見た。
「あの・・・何かご用ですか?」
1人の男の子がこちらに近づきおずおずと質問を投げかけてきた。
「あ〜、気にしないで。私ここの卒業生だから。」
あははと笑うと少年もつられて笑い、コートに戻っていった。
7年前と変わらない、少年達の声、赤いユニフォーム、テニスの音。
変わったのはあの人達が・・・あの人がいないだけ・・・。
サエちゃん、ダビデ、いっちゃん、亮ちゃん、さとちゃん、けんたろー、そして、バネちゃん。

瞳を閉じれば今でも思い出される皆がテニスをやってる姿。
小学生だった私は皆がテニスをやってる姿にずっと、憧れてた。すっごくカッコ良かった。その中でも目に付いて離れなかったのが力強いバネちゃんのテニス。
フェンスっていう1枚の壁がもどかしかった。
中学生と小学生って言う壁がものすごく大きかった。
コートから出れば皆は優しいお兄ちゃんで・・・。
私も『お兄ちゃんと妹』の関係で良いって思ってた。
ある日いつものように海に遊びに行って1日中遊んで、「疲れた!!」って言ったら「しょうがねぇなぁ。」って苦笑しておぶってくれた。広くて暖かい背中。
大きいなぁ、追いつけないなぁ。って切なくなった。
いつのまにか、憧れから恋に変わってた。
けど、きっと、素敵で優しいバネちゃんにふさわしい彼女さんができるんだろうな。今はテニス一筋だけど、きっと、いつか・・・
・・・?泣いてんのか?どっか、怪我でもしたか?」
背中で泣いている私にバネちゃんがおろおろしてる。
ごめん、ごめんね、子供で・・・。
私はただ、首を横に振っていた。
「ホントに大丈夫か〜?」
「大丈夫、大丈夫だから。」
バネちゃんはサエちゃんに促されそのまま、ずっと黙ってた。
結局、私は、家に帰りつくまで泣きっぱなしだった。
伝えても良いですか?

全国大会の日、暑い日だった。
もう、8月も終わりだって言うのにすごく暑かった。
皆がバスに乗る、私は見送り。
バネちゃんの背中が、力強く、優しく、なぜか、儚げに感じられて思わず、抱きついた。
「ど、どうした!?」
「・・・負けないでね。」
バネちゃんは、驚いた顔をしたが私が腕をほどくと私の背に合わせ屈み笑顔で頭をぽんぽんと撫でた。
「負けね―よ。」
「・・・うん。」
少し不安を残したまま送り出した。
数時間後電話で結果を聞いた。「負け」たって・・・
わかってた、もうバネちゃん達の夏は終わったんだってこと。
私は、テニスコートに来てた。気付いたらここに足が向いていた。
誰もいないがらんとしたテニスコート。いつもここで、皆頑張ってたのに。
もうバネちゃんのテニスをしているここで姿を見ることは無いのかな?
また、壁が大きくなっちゃう・・・。それに・・・
「・・・う〜。」
私の目から涙がばたばたと落ちた。
私も悔しいよ。あんなに一生懸命頑張ってきたのに・・・。
、また、泣いてんのか?」
背後から声がして振り返ったらバネちゃんがいた。
「サエに呼んで来てくれっつ〜からよ。」
バネちゃんの笑顔に、私は泣きながら走っていって首に抱きついた。
「どうした〜?」
背中をぽんぽんと叩かれる。
「だってだって・・・バネちゃん達負けちゃって・・・」
「ごめんな・・・負けね―よって言ったのにな。」
「バネちゃん、ここでテニスもう・・・しないの?」
「まぁ、受験勉強があるからなぁ・・・。でもときどきは来るぜ。」
にっと笑った。
「私、バネちゃんのテニス好きだから、・・・バネちゃんが好きだから!!」
告白にバネちゃんは驚いた顔をした。
迷惑だったてのはわかってる。私は、小学生で、バネちゃんは中学生。来年、私が中学生になっても高校生になってしまって、私が高校生になると今度は大学生・・・。
追いつけない距離がある。
でも、離れてしまう前に伝えようって思った。いつか、バネちゃんに彼女が出来てしまっても後悔はしないように。
「ありがとな、けど、俺達は3才って言う差がある。大人になってしまえば気になんないのかもしれないけど、これから、が中学、高校になってもっと良い奴が現れるかもしれない。だからさ、7年後、もし、変わらず、俺を好きでいてくれたならここに来てくれ。俺もちゃんと7年の間に考える。」
「わかった。」
私達はゆびきりを交わした。
お互いの賭けの始まりの日。

私は、ここにいる。7年なんてあっという間。
だって、バネちゃん以外に素敵なヒトなんて現れなかったから。
バネちゃんは・・・、私の事・・・どう考えてくれてた?
少し不安になり、一つ溜息をついた。
「帰っちゃおうかな。」
「オイオイ、折角来たのに帰るとか言うなよ。」
聞き覚えのある声にハッと振りかえる。
7年も経ってるんだからものすごく男らしく、大人っぽくなった。
でも、7年間一度も会ってなかったわけじゃないし面影もちゃんと残ってる。
「久しぶりだな。」
久しぶりに見る笑顔に涙が出た。
「ほんと、泣き虫だなぁ・・・。」
近寄ってきて指で涙をぬぐった。
「迎えに来たぜ、。俺も、好きだから。」
昔と同じ、私の大好きな優しい笑顔。
「うん、バネちゃん、私もずっと大好き!!」
あの時みたいに。思いっきり首に抱きついた。私の後輩達が見てるのも構わずに。
7年越しの、小学生だった私の恋はやっと、実を結んだ。

終わり

あとがき
アニプリを見ていて思いついたネタです。
小学生の女の子達が「ババロアよ〜」って持ってきたところを観て。
サエとか、バネとか絶対人気そう・・・。