空は高く晴れ渡っていて
     まさに文化祭日和。


     「んー、なにしよっかなー。」

     は背伸びをしながら辺りを見渡す。
     やはり人は多く、なかなかの繁盛ぶりだ。
     はぶらぶらとおもしろそうなクラスを見ながら
     歩いていると、目の前から見知った少年が歩いてくる。
     今日は部活はないので帽子はかぶっていない。


     「リョーマ君っ。やっほ☆」

     リョーマは、前方から笑顔で手を振りながら走ってくる
     を見て、軽く頭を下げ
     周囲にテニス部員がいないのを確認してから
     少し小走りでへ近づいていった。


     「先輩、一人っすか?」
     「うん。クラスも暇になっちゃってぶらぶらしてたの。」

     リョーマはそれを聞いてまた軽く周囲を見渡す。


     (先輩達はいつどっからわいてくるかわかんないし・・・)


     そしてリョーマは、誰も(特に某F先輩)わいてきていないのを確信し
     生意気そうに微笑んだ。

     「じゃあさ、一緒に校内まわりません?」
     「いいの?」
     「当たりまえっすよ。」

     リョーマの言葉を聞いて微笑むから、少しだけ赤くなりそうな顔を
     おさえるようにして、リョーマは歩き出した。




















     「・・・・・一人で行ってきなよ。」
     「一緒に校内まわるっていったじゃないっすか。」
     「・・・・・これだけは嫌。」

     「・セ・ン・パ・イ?」

     リョーマは面白そうにの顔を覗き込む。
     少し涙をためているの顔がかわいいとか思っている始末。


     「・・・これだけはやめよう?お化け屋敷なんて・・・ね?」
     「乾先輩の汁よりましっすよ。」
     「そんなことないって〜・・・」



     そんなこと、あるんです。



     「次の方お入りください。」

     お化け屋敷のドアが開き黒いゴスロリの少女が手招きをしている。


     リョーマは待ちくたびれたかのような顔をしてをひっぱる。
     「・・・やっぱり入るの?」
     「とーぜん。」
     そしてリョーマに引きずられるようにしては中へと入っていった。








     「ひきかえそ〜・・・くらいし、怖いんだよ?」
     「・・・先輩。ここはお化け屋敷なんすから・・・。」
     「でもっ・・・」

     は半分なき声でリョーマの制服のすそをつかんだままうごかない。
     ちなみにまだ、脅かし役すらでていない。

     「なるほどね・・・」
     リョーマがぽそりとつぶやいた言葉には顔をあげると
     薄暗い中でうっすらと笑うリョーマがいる。
     が何か嫌な予感を感じたのとほぼ同時に
     肩に手がまわされ、リョーマにひきよせられていた。

     そしてそのままの状態でリョーマは前へすすみはじめた。

     「・・・え?ひきかえさないの・・・?」
     「ひきかえすなんて俺言ってないっすよ。」
     「でもさっき、なるほどって・・・。」
     「俺にくっついてれば怖くないってコト。」

     が反論しようとしたその時
     角から人がとびだしてきた。

     「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

     リョーマの腕の中にすっぽりと収まっている
     叫び声をあげて思いっきりリョーマに抱きつく。

     「先輩、大丈夫っすか?」

     少し笑ったような、低い響かない声で
     リョーマはにささやく。
     はささやかれた瞬間に自分が抱きついてしまったのに気づき
     あわてて離れようとするが、リョーマの手が許してはくれなかった。

     すると今度は二人の後ろから
     ゾンビがうなり声をあげて近づいてくる。

     「やだやだやだぁーーーーーーー!!」

     さっき離れようとしたのも忘れ、はまた思いっきりリョーマに抱きつく。

     「離れない方がいいでしょ?」

     はその耳元でささやかれた問いにこくこくとうなづいている。

     「じゃ、いこっか。」

     リョーマの体にまきつかれたの体は微かに震えていて
     それがまたかわいいとか思ってしまうリョーマ。

     右腕での肩をささえながら、リョーマは小さくささやいた。






     「大丈夫。俺が守ってるんだからさ。」



     「・・・・ありがと。」




















     「うーん、楽しかったっすね。先輩?」
     教室をでたが、まだ怖さで震えている
     リョーマはその様子を見て勝ち誇ったような微笑を浮かべる。

     「先輩?歩けないんだけど・・・」
     「え・・・・・」

     はなんのことかと思ってリョーマを見ると
     なんだかいつもより近くに見える。
     一瞬、の脳回路は停止し、感じていなかった腕の感触が戻ってくる。



     「ぎゃっ!!!」



     「先輩が望むなら、ずっと抱き合っててもいいっすよ?」

     そういってうっすら笑うリョーマ。
     「リョーマ君のいじわるっ!!」

     「うそっすよ。」

     「ふんっだ。」
     リョーマに背を向け歩き始めたに背後から声がかかる。
     「・・・あそこの喫茶でケーキおごりますよ。」

     「う・・・・」
     「いかないの?すっっごくおいしいって桃先輩がいってたっすけど。」

     「・・・・・・許す。」

     「じゃ、行きましょ。」

     そういってさしだされた手に手を重ね、甘いにおいのする教室へ

     二人、入っていった。










     ―怖いの平気なの?

     ―・・・別に。平気でもないかな。

     ―だって全然怖くなさそうだったのに・・・。

     ―先輩が怖がり過ぎなんじゃないっすか?

     ―また、いじわるっ

     ―本当のことじゃないっすか。



     ―う・・・・。






     違うんだ。





     本当に平気なんかじゃない。





     震える先輩の体からぬくもりを感じて




     愛しくて愛しくて




     ただそれだけ。




     守り通すのは俺だって思っただけのこと。





END